進化と軍拡競争

 進化論の基本的な理論というのは実にシンプルである。例えば、こちらのWikipediaにもあるように、
1. 生物の個体には、同じ種に属していても、さまざまな変異が見られる。(変異)
2. そのような変異の中には、親から子へ伝えられるものがある。(遺伝)
3. 変異の中には、自身の生存確率や次世代に残せる子の数に差を与えるものがある。(選択)

 中心となる理論はこういうものである。これで現在の生物の多様性が説明できてしまう、と言われれば、そりゃ「そんなはずないだろう」とか思いたくなるのもわかるよね。で、つい生物というのは誰かによって目的を持ってデザインされた、という話にのっかってしまったりもするのだが。

 考慮しなければいけないのは、まずはタイムスケールの違い。たかだか百年余りという寿命しか持たない生命が、数百万年とか数億年といタイムスケールを実感するのは難しい。
 そしてもう一つは、自然選択における正のフィードバックの存在である。ある生物の生存確率や繁殖率というのは、他の生物にも影響される。例えば、他よりも少しだけ硬い甲羅を持っている個体は、その分だけ捕食される可能性が減るから、種全体としてはそちらの方向に進化する。すると、そのことが捕食する側の生物にとっての生存条件に影響して、より鋭い牙なり爪なりを持つ個体が生き延びるようになる。この盾と矛の関係は人間同士の軍拡競争とまるっきり同じ構造を持つもので、進化論的軍拡競争とそのまんま呼ばれていたりもする。
 人間と違って同種同士で争ったりしない……なんてことはなく、場合によっては同種同士の争いの方が激しいケースだって多々ある。

 だからもしかすると、お互いに争いあい、軍備を増強しあうというのは、人間にとっても非常に”自然”なことであるのかもしれないのだ。

 ……だがしかし、そう、だがしかし、なのだ……。
 
 to be continued

コメント

No title

こちらでははじめまして。
もし、進化論をダーウィン進化論としてお考えなら、
今西進化論もお読みください。
「キリンの首は何故長いか? 長くしたかったから」っていう
精神分析学者の意見が僕には一番気に入ってますが。

「お互いに争いあい、軍備を増強しあうというのは、人間にとっても非常に”自然”なことであるのかもしれないのだ。」そうそう、そうかも知れませんね。
ネット上のヴァーチャルな殺人をくりかえしてるご仁も、ごたぶんにもれませんね。
まさか、あなたもチームの一員ですか?まさかねぇ。…まさかちがうとは思いますが。

No title

おはようございます。
単に「修正」かけたかっただけなんですが、二通張り付いてしまいました。申し訳ありません。

いらっしゃいませ

ふぉっくすさん
*先に入ったコメントは削除しておきました。
ここで言っている進化論とは、現在主流になっている統合説、またはネオ・ダーウィニズムと呼ばれている物で、ご指摘いただいた通り、ダーウィンの進化論を中心概念としています。今のところもっとも信頼のおける仮説であると考えています。
今西進化論については、私はWikipediaに書いてある程度の知識しかないのですが、個体の生存競争ではなく種レベルの棲み分けによって進化が起きたという点でダーウィンの進化論とは対立するものとして一時期は大きく取り上げられたものの、最近ではすっかり支持を失っていると見ています。
仮に、再評価されるとしても、ダーウィニズムに対抗する理論としてではなく、それを補完する物としての役割が精一杯ではないでしょうか?
また、ここで問題にしている同一種内での競争について、どのような見解を持っているかという点も気になるところです。もしなにか良い文献をご存知でしたら、教えていただけると幸いです。

>「キリンの首は何故長いか? 長くしたかったから」
それは文章としては面白いですが、少なくとも進化という現象を科学的に説明する理論ではないでしょう。第一、精神分析学者が科学としての生物進化について何か意味のあることを言明できるとも思えません。
また、キリンという、かなり高度な感情なり意識なりを持っていると信じられる生物についてであれば意味もあるでしょうが、これがたとえば、生物が危険な化合物である酸素を使って生命活動を行うようになったのはなぜか?
などという問いに、「そうしたかったから」などと答えたら一笑に付されると思います。

「ヴァーチャルな殺人」については、別途エントリーを立ててお答えしたいと思いますので、しばらくお待ちください

いかん

ツッコミどころを見つけてしまった
危険な化合物ー>危険な元素
酸素は化合物じゃありませんね。

No title

ふぉっくすさま、こんにちは。
「たんぽぽ」です。
先日は、わたしのところへ、ようこそお越しくださりました。

「ネット上のヴァーチャルな殺人をくりかえしてるご仁」は、
7月5日エントリによると、わたしのことでいいのかな...?

わたしは、他人のブログを閉鎖に追い込むなんて、
くりかえしてなんかいないですよ。
一時閉鎖したかたが、ひとりだけいらしたけれど、
わたしが追い込んだのではないですし...


遺伝子の本体は、DNAという分子なのですが、
この分子の塩基配列が、生物の形質を反映します。
そして、親から子へ伝わる際、複写ミスで塩基配列が
変化することが、形質の「変異」になります。
http://www.kazusa.or.jp/j/dna/index.html

遺伝は、分子の構造の変化ですから、生物の意志なんて
入りようがないですし、環境の認識もできるはずないです。
よって、「長くしたかったから、首が長くなった」のではないし、
今西進化論も、いまでは支持されないものです。
http://jvsc.jst.go.jp/earth/sinka/index.html

今西進化論

うちゃさま、こんにちは。 
「たんぽぽ」です。

わたしのブログで、いつもコメントくださって、ありがとうございます。
こちらには、前に一度だけコメントしたことがありますね。

「今西進化論」は、こんなのが参考になるのかな?
わたしも、そんなにくわしくないけれど、
「生物は環境を認識できるから適応できる」といった内容のようです。
http://www1.plala.or.jp/yossie/ikimono/ik09.htm

たんぽぽさん

こんにちは、コメントありがとうございます。
今西進化論、ご紹介いただいたページを見る限り、やはり現代の生物学の元では議論に耐えうる論理ではなさそうですね。
ありがとうございます。

->ふぉっくすさん
なにか付け加える情報などお持ちでしたら、ご紹介ください。

No title

あらら、ご丁寧にレスポンスいただいてる。(一応感謝)
まぁ、皆さんご存知だとは思うんですが、
ダーウィニズムってマルクスと同時代でしょ?
「進化論」って「社会発展段階説」に似てると思いませんか?
もちろん後者の「精神的風土」に前者がなった感はあるんですが。
時代を考えるとまさに「下部構造が上部構造を規定する」ってことかなぁ?
マルクスは自分で言ったことで、自分を説明しちゃったわけですね。
> たんぽぽさん
「遺伝子の本体は、DNAという分子なのですが…」
一応、中学校は出てますので、さすがの私も存じ上げています。
>うちゃさん
付け加えることねぇ・・・
『ダーウィンを超えて (中公文庫)』 これでも読んでみたら?手始めに。
「精神分析学者が科学としての生物進化について何か意味のあることを言明できるとも思えません。 」
これは一概にいえないと思いますよ。
河合隼雄なんて(まぁユング派ではあるけど)いろんなことに言及してるってのもあるし、専門外のことだから意味が無いってのもねぇ。
(まぁ、ユング自身は「半分オカルト」みたいなとこあるんですが。)
「キリンの首」の話は『哺育器の中の大人 精神分析講義』ってのをお勧めします。
実にオモロイ。「科学的」かどうかはご判断に委ねます。

No title

>「進化論」って「社会発展段階説」に似てると思いませんか?

思いませんけれど。

>「遺伝子の本体は、DNAという分子なのですが…」
>一応、中学校は出てますので、さすがの私も存じ上げています。

DNAは、中学校では習わないと思うけれど、
ご存知でしたら、生物の意志なんて、遺伝や進化に
影響しないことくらい、わかりそうに思うけれど...

精神分析学者というのは、ユングかな...?
獲得形質も遺伝しませんよ。

No title

あら、まぁ、またまた ご丁寧にレスポンス。
「DNAは、中学校では習わないと思うけれど、…」
私の中学のときの理科二類の教師が、いちびって授業でやってたんですね。
数学の教師は集合論とかやってくれるし、おかげで教科書は授業で使わなかった…という個人的事情であります。(学習指導要領無視ってわけですね。)
「精神分析学者というのは、ユングかな...?」
・・・ユングは精神分析学者(または精神分析医)ではあるが
・・・精神分析学者がすべてユング(またはユング派)ではない…ってことですね。
  (ユングって読んでると「おいおい・・・」とか思っちゃいますが、
  河合先生はじゅうぶん尊敬に値する業績を残された方だったと思いますよ。)
『哺育器の中の大人 精神分析講義』っていう署名でお調べください。
河合隼雄はユング研究所ですが、こっちのおっさんはストラスブールですね。
知っててわざわざ「?」って聞いてくるんでしょ? たんぽぽさんは、ちょいとイジワルですね。(笑)

ついでに・・・

> たんぽぽさん
さっき書き忘れたんだけど
『物理学と神  池内 了(集英社新書)』ってのも面白いですよ。
科学と非合理的な精神(宗教とかね)の一筋縄ではいかない関係がわかりやすく書いてあります。amazonで見たら「147円」で出たました。お買い得ですよ。
『疑似科学入門 (岩波新書 新赤版 1131)』ってのもありましたが、出たばっかりで、まだ「値崩れ」まで至ってないので、手に入れてません。

No title

うちゃさん、はじめておじゃまいたします。
ちょちょんまげと申します。
コメント欄をお借りいたします。

>ふぉっくすさん
はじめまして。
横から失礼いたします。
私は頭がくるくるぱーでよくわからないので、教えてくださいませ。

>これは一概にいえないと思いますよ。
河合隼雄なんて(まぁユング派ではあるけど)いろんなことに言及してるってのもあるし、専門外のことだから意味が無いってのもねぇ。

「河合隼雄氏がいろんなことに言及」すると(言及しているってことだけで)「精神分析学者が科学としての生物進化について何か意味のあることを言明できるとも思えません。 」に対する反論になるんですか?
他所で使ってみたくなるような面白いロジックなので教えてくださいませ。

たんぽぽさんの、
>精神分析学者というのは、ユングかな...?

は、とりあえず「全ての精神分析学者はユング(またはユング派)である、と質問者が考えている」と読むのが正しいのですか?
私はうっかり、「精神分析学者というのは、ユング(またはユング派)のことかな?」と、読んでしまい、それがまた一般であるなどという愚かな考え方を一瞬持ってしまいました。
まったく、私のようなくるくるぱーが間違えてしまうような書き方をなさるたんぽぽさんはイジワルですね。

『哺育器の中の大人 精神分析講義』の「おっさん」は岸田秀さんとおっしゃるようですね。(あくまでWikipediaの範囲内ですけど、やけにネガティブな評価が多い方ですね。きっと、Wikipediaの記述がとんでもないのでしょうね)
で、
>河合隼雄はユング研究所ですが、こっちのおっさんはストラスブールですね。

との御記述ですが、さらり、と「こっちのおっさんはストラスブール」と書かれているところを見ると、精神分析学において「ストラスブール」は「ユング」に対する一方の雄であることが、周知の事実であるようですね。

どうかこの非常識ニンゲンに精神分析学における「ユング」と「ストラスブール」の主張の違いをご説明いただけませんでしょうか。
どうぞよろしくお願い申し上げます。


なんか話があらぬ方向に飛んでますが

おもしろそうなので、そのままお続けください。

ふぉっくすさん
>「精神分析学者が科学としての生物進化について何か意味のあることを言明できるとも思えません。 」
>これは一概にいえないと思いますよ。
私の意図としては、「人間の精神活動についての科学である精神分析を使って、が生物一般の現象である進化を説明しようとするのは無理があるだろう」って意味です。つまり、
>専門外のことだから意味が無い
専門外のことだから、という意味ではなく”精神分析の専門家として”語る領域ではないんじゃないの? ということです。
ところでこれもあんまり知らないのですが、人間以外の生物の精神分析ってどなたかやっておられるんでしょうか?

うっかりのほうです

ちょちょんまげさま

>>精神分析学者というのは、ユングかな...?

「うっかり」のほうです。
なので、「私のようなくるくるぱー」なんて、悲観しなくてだいじょうぶですよ。

たんぽぽさん

げっ、「うっかり」のほうなんですか?
私はこれから、例えば
「作曲家というのは、バッハかな...? 」
みたいな記述があったら、「全ての作曲家はバッハ(あるいはバッハ派)」からスタートして、そして「えーっと全ての作曲家はバッハじゃないからぁ」みたいなことしなきゃいけないからめんどくせ〜、とか思ってました。

あらら、またまた・・・

いろんな方からありがとございます。
あまりにもいろいろで「誰々さんへ」ってがめんどくさいので、かつつまみぐいでのレスです。
誰へのコメントかは勝手に考えてください。
「精神分析学者が科学としての生物進化について…」
こりゃ「舌足らず」だった感は大いにあります。
今のがっこは「隣の教室われ関せず」は普通らしいですね。(プロフェッサとかやってる友人もそういいってますから。)
でもね、「それじゃ『レオナルド・ダ・ヴィンチはいったいナニ屋だったんだ』ってこともあるし、
「ニュートンは近代物理学の祖であるが、同時に国会議員でもあったし、錬金術の研究家でもあった」ってのはどうなるんでしょう?
「フロムが『ナチズムはマゾヒズムだ』」っていったのなんて「専門外」もいいとこですね。
  (フロムはあんまりおきにいりじゃないですけど)
岸田秀が「人間が人間であるから、精神疾患がある」と思って「じゃそれはどこから始まったんだ?」「そもそもサル(みたいなもん)が人間になる『合理性』ってあるのかい?」ってのが彼の学者としての出発点だと思います。
「こんなの『トンデモだよ』・・・」って、世間の風潮にあわす前に、まず自分で検証するのが「科学的態度」ではないでしょうか?

最後に
>>「進化論」って「社会発展段階説」に似てると思いませんか?
>思いませんけれど。
「やわらかく」言ったつもりですが、
これについては貴女の勉強不足です。
もっと勉強してください。
貴女ならきっと何かつかめるはずだと思っています。
でわでわ

もひとつだけ

岸田秀への評価がネガティブなのは当然だと思います。
まず日本の精神医学会で「フロイト主義」はすでに「時代遅れ」だし、
岸田秀は、それに輪をかけて異端です。
80年代はポストモダーンがメジャーだったし、
ケイザイガクではイズミ時代にはなんと、あのタケナカがメジャーだったんですね。
  (そりゃぁ冗談でもウソだろ・・・って思ってたけどね。)
異端の多くは「トンデモ」だという歴史もありますが、
澁澤龍彦がマルキ・ド・サドを日本に紹介したことも思い出してください。
要は「自分の目で見て、耳で聞いて、かつ自分の脳味噌で考えるのが大事です」
これはとっても大変で苦しいことですが、つまんないハヤリだのウケウリだのをコピー&ペーストしないぶんだけ、まだマシなんじゃないでしょうか?

すんません。もいっちょだけ

ストラスブールは単に「チューリッヒのユング研究所じゃないよ」って程度の意味です。
まぁ、フランスのナントカって受験資格試験があるくらいだから、その他の要素も含めて、日本の国立大学とが比べ物にならない「権威」はあるんだろうと思います。(だから・・・どうだってんだ・・・てのもありますがね。(笑))
ユングは精神科臨床医としてのほかに実にさまざまな著作を残しています。
たぶん「心霊現象」だの「UFO」だのに関する著作は死後の公開じゃなかったかなぁ?
> ちょんまげさん
ご質問のコトバは平易で私にはありがたいのですが、私にコメント欄でご説明できる能力はとてもありません。(残念ながら)
まずは『ものぐさ精神分析』というのを読まれることをお勧めします。
個人の精神疾患の問題だけじゃなくて、日米問題なんかにも言及しています。
「個人の中にありうることは、共同幻想たる国家にも適応できうる」ってお考えみたいですね。
「なるほどぉ」か「ちっ、くだらねー」かは是非、ご自分でご判断願えたら嬉しいです。

ふぉっくすさん

>「自分の目で見て、耳で聞いて、かつ自分の脳味噌で考えるのが大事です」
一般論を語るのは簡単です。そんなものは教師の説教のようなものにすぎません。

>日本語はロジックの記述に向いてないのでしょうがないのですがね。
これは、あなたが「自分の目で見て、耳で聞いて、かつ自分の脳味噌で考え」た結論だったのでしょうか。 なんだか、どこにでも転がっている程度の俗説のように聞こえます。
受け売りの「俗説」をコピー&ペーストしているのは、いったい誰なのでしょう。

科学の話ですよね?

>ふぉっくすさん

>異端の多くは「トンデモ」だという歴史もありますが、
>澁澤龍彦がマルキ・ド・サドを日本に紹介したことも思い出してください。

ここでの話の流れで文学と科学を同じ舞台に乗せるのはさすがにマズイのでは?そもそも他の方々がおっしゃってるのは「異端だからダメ」ではなく「議論に耐えうる論理じゃないからダメ」ではないでしょうか?

>要は「自分の目で見て、耳で聞いて、かつ自分の脳味噌で考えるのが大事です」

いい言葉ですね。

No title

 そういや以前に「竹内久美子の著書を信じているバカ」ってのがいましたが。
http://members.jcom.home.ne.jp/natrom/guide/guide.html
 この竹内さん自身は、自分の書いたものが「ネタ」だとわかってるわけで、ネタを書く竹内氏が問題か、「ネタ」を信じる方が問題かなんて。ことを話したことがあります。
 それで言えば、そもそも「進化」と「軍拡競争」というのも、単に構造の類似性というだけで、「軍拡競争」に「進化論」が適用できるかという話じゃないわけだし、「すみわけ論」が進化の説明には使えなくても「軍拡競争」についてのヒントにはなりうるわけです。だったら、そう書けばいいのに。
 岸田秀氏の著作にしても、氏の本職分野の評価とか、日米関係を開国トラウマで説明する「正しさ」とは無関係に、「ネタとしておもろいかどうか」で充分なんじゃないですかね。
 フィクションとして楽しめばいいものに「科学的に正しい」という視点を持ち込むのは、「竹内久美子」を信じてしまった人と大差ないように思いますが。

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