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科学は間違える

 それも、わりとしょっちゅう。そして時には致命的に。

 スティーヴン・ジェイ・グールド氏の「パンダの親指」には、その典型的な例が幾つか紹介されている。そのうちの一つは、ピルトダウン人の化石捏造事件である。人の頭骨にオランウータンの下顎をつなぎ合わせたという、細工としてはベタなものだが、ヨーロッパ人は知能の発達した祖先から進化したという予見を裏付けるものとして、信じられてしまった。
 科学者といえども当時の西ヨーロッパにおける人種差別的な文化の影響から逃れられなかったという証拠でもある。だが、もちろん現代の日本人がこれを笑うことができるわけがない。記憶している人も多いであろうが、旧石器捏造事件と驚くほど酷似している。

 また、グールドが紹介しているもう一つの例、頭の大きさと知能の発達についての研究もまた、同じような印象を受ける。彼等は脳のサイズについて多くのサンプルを集め、それらの統計から、男性は女性より、白人は他の有色人種よりも、それぞれ知能に優れている、という結論を導いている。これもまた笑えない。脳のサイズなどという単純な指標はさすがに使われなくなっているものの、性別や人種による知能の生物学的な優劣という話は、現代でも時々よみがえってくる。

 こういった”科学的な成果”(なにしろ、名の知れた科学者によって権威付けされたりすることさえあるのだ)をありがたがって受け入れることは、時に有害で危険ですらある。

 さて、ここまで紹介した”間違った科学”というもの、結論に至るまでのプロセスがニセ科学と呼ばれているものによく似ているのだ。証拠の捏造と言う派手なルール違反があるとは限らない、得られたデータの恣意的な解釈や文化的な偏見から来る誤った仮説と言った特徴もよく似ている。本来それほど遠く隔たってはいないものなのだろう。

 つまりだ、科学が信用できないといいながら、ニセ科学に近づくのは意味がない。ニセ科学と言うのは、科学の最もダメな部分を真似たまがい物であるのだ。
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Comment

間違えるけど

解釈を誤ってねじ曲げられた”科学的な成果”を正すのも、また、科学的な成果や手続をもって正される筈ですよね。



…でも、意図的な捏造をした件を、「科学」のカテゴリーに入れていいのでしょうか?という気がする(^^;

2008.06.01 (Sun) | 碧猫 #fYTKg7yE | URL | Edit

捏造自体ではなく

碧妹
 捏造を受け入れ、しかもそれを権威づけてしまったことの方が問題です。本来なら退けられるべきものだった。ピルトダウン人のときにはかなり初期に見破っていた人がいましたし、旧石器捏造の件で考古学会が調査結果を公表したのもそれが理由でしょう。

2008.06.01 (Sun) | うちゃ #9fUrC8Yk | URL | Edit

意図的でなくても

意図的なねつ造でなくても、誤ることはありますよね。後からふり返れば先入観だったり、データの解釈が違うとか。もちろんそれを最小限にする努力というかシステムはあるのだけれど、完全とは言えない。

>ニセ科学と言うのは、科学の最もダメな部分を真似たまがい物

そのとおりだと思います。

2008.06.02 (Mon) | north-pole #- | URL | Edit

「科学」を

単なる「権威」でしかないように考えている層が、社会の成員において少なからぬ割合を占めているのではないか、と思っています。
…思った以上に大きい割合かもしれなくて、ショックですけど…。

あなた達が叩いている「科学」は科学者及びその集団の権威や欠点であって、科学の成果や手続きじゃないってばー、と隅っこで愚痴りつつ、そういう方々にトラックバックは出来なかったのでした…。

2008.06.02 (Mon) | 七重 #mQop/nM. | URL | Edit

No title

 「科学」は間違えるというよりも、「科学」を扱っていても間違って「非科学」を扱ってしまうということでしょう。
 資料のそのものや、その発見は「科学」ではなく、そこから読み取ることが出来るというのが科学ですから。
 マンモスがいた時代に、それを獲って食ってた人にははおそらく科学はなかったと思います。マンモスがいなくても、マンモスとは何かがわかるのが科学だと思うんですがねぇ。

2008.06.02 (Mon) | 南郷力丸 #- | URL | Edit

解った

なんでそう読んだのかと考えて、ようやく納得。

 第三センテンス冒頭「科学者といえども」を、私は捏造した人を主に示すと解釈してしまったのですけど、うちゃさんはそこで指す「科学者」を発表された学会のメンバーを念頭においてたんですね。

2008.06.02 (Mon) | 碧猫 #fYTKg7yE | URL | Edit

No title

north_poleさん
>意図的なねつ造でなくても、誤ることはありますよね。
そうですね。科学と言えど人の営みなので、誤りを0にする事はできない。極力少なくすることはできたとしても……

七重さん
>単なる「権威」でしかないように考えている層
最近は、「ポストモダン」に逃げちゃう人とかもいます。そちらはそちらでやっかいなんですよ。


2008.06.02 (Mon) | うちゃ #9fUrC8Yk | URL | Edit

No title

南郷さん
>「科学」を扱っていても間違って「非科学」を扱ってしまうということでしょう。
そういうことでもあるのですが、渦中にいる人にとっては、まぎれもなく「科学」をやっているつもりなので、それに気付くのが難しい、と言う話でもあります。

碧妹
はい、そういうことです。

2008.06.02 (Mon) | うちゃ #9fUrC8Yk | URL | Edit

「ポストモダン」は

実際に「社会」や「政治」とかのシステムを運用していくことを考えると、何だかなーと思います。
実際のシステムの運用においてはどこかで折り合いつけなきゃいけないわけで、その際に論理的な(あるいは実証主義的な)基準は意義を失わないはずだろう、と。

…拡散していきたい個人を止める気は、「被害が降りかからない限りは」ないのですけど。

2008.06.03 (Tue) | 七重 #mQop/nM. | URL | Edit

わかっていてやってるならいいんですけどね

実証主義に耐えられなくて、逃げちゃってるだけだと困りもので。

2008.06.03 (Tue) | うちゃ #9fUrC8Yk | URL | Edit

No title

 ポストモダニズムは、反モダニズムじゃなくて「ポスト」なんですけどねぇ。
 モダニズムというのは均一な論理で押し通せるから、ある意味、楽と言えば楽なんです。そうじゃなくて、コンフリクトを包含しながらもやっていくというのは大変だし、それが出来そうにない「モダニズムどっぷり」のポストモダニズムへの曲解をそのまま、実際にやっちゃう「なんちゃってポストモダニズム」というのが厄介ですね。

2008.06.04 (Wed) | 南郷力丸 #- | URL | Edit

長くなるので

コメントにすると長くなっちゃうので、エントリたてました。TBさせていただきました。

2008.06.05 (Thu) | north-pole #- | URL | Edit

No title

疑似科学問題を考える上で
私もたまたま最近石器捏造事件のことを思い出していて
こちらを見たので書き込みしてしまいますが

捏造した人よりそのまわりの研究者がなぜこんなものを
見抜けなかったのかとそっちが問題なんですよね。
もしくは見抜いていながらなぜ声をあげなかったのかと。

2008.06.07 (Sat) | JMaEND #RpRZ5X7E | URL | Edit

いらっしゃいませ

>捏造した人よりそのまわりの研究者がなぜこんなものを
>見抜けなかったのかとそっちが問題

そうなんですよね。ただ彼等が愚かであった、で済ませられる話でもありませんし。

2008.06.07 (Sat) | うちゃ #9fUrC8Yk | URL | Edit

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 「『科学』を単なる『権威』でしかないように考えている層」について、少し、話題になっている(http://blog.livedoor.jp/nanae_ll/archives/51080460.htmlとか、http://uchya.blog109.fc2.com/blog-entry-920.htmlのコメント欄とか)。  「ポストモダン」とか言われると

2008.06.05 (Thu) | 百丁森の一軒家

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