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彗星夜襲隊――特攻拒否の異色集団

 2003年に光人社NF文庫より出版されていたものの、長いこと入手困難になっていた本書が、つい先頃新装版となって出ているのを知ったのでご紹介。
 アマゾンへのリンクも貼っておこう。
 彗星夜襲隊―特攻拒否の異色集団 (光人社NF文庫) 

 この本は、太平洋戦争末期、他の部隊がすべて特攻作戦をとる中、ただ一つだけ正攻法の夜襲攻撃で沖縄戦を戦い抜いた芙蓉部隊と、その指揮官である美濃部正少佐の苦闘の記録である。
 この部隊、日本軍の常識から考えると、何もかも規格外れと思えてしまう異色の戦闘部隊であった。だいたい、芙蓉部隊という名前も元々は寄せ集めの飛行隊であったものに自分たちでつけたニックネームが、いつのまにか正式名称になってしまったそうだ、そんなのは日本軍の中でもこの部隊だけだったらしい。
 この部隊は元々、フィリピンで戦い、消耗した部隊と共に内地に帰って来た美濃部少佐が捲土重来を期して、高速の夜間戦闘機による夜襲専門部隊として育てたものだった。当初は部隊の編成と訓練が終わったら、再度フィリピンに進出するよていだったのだが、戦局の悪化によりその前にフィリピンは陥落してしまう。

 フィリピン陥落後、次は沖縄戦だ、ということになるのだが、既にこの時期まともな作戦を立てる能力は大本営には無くなっていた。このとき大本営参謀の立てた方針は練習機も含めた総力特攻。これに使おうとした飛行機は例えば「白菊」の様な最高速度200km/時そこそこ(当然特攻のために爆装すればそれより落ちる)という機体まで含まれていた。
 中央の方針が決まった以上、美濃部少佐の部隊にも特攻が要求されるんだが、航空参謀を前にして、こんな馬鹿げた作戦に自分の部下は参加させられないとつっぱね、あくまで正攻法での攻撃を貫いたのだった。

 ただ、この人は特攻が非道だからという理由でつっぱねたわけじゃない。あまりにも成功の見込みの少ない愚策であり、命がけで戦おうとする兵たちを愚弄するものだと思えたのだろう。
 実際に、芙蓉部隊の苦闘の記録を読むと、正攻法での戦いが特攻よりも楽なんてことには全くなっていないことが良くわかる。基地のあった鹿屋から沖縄の戦場までの650キロを、夜間飛行し、戦闘を行って帰還してくるのだ。それも一回で終わるわけじゃない。作戦が続けば連日の出撃となったこともあった。
 苦闘したのはパイロットだけじゃない。芙蓉部隊の主力機であった「彗星」は高性能だがトラブルの多い機体としても有名で、当時の日本の整備力ではまともに稼働させるのにも一苦労というものだった。それを最終的には7割から8割という高い稼働率を実現したのである。

 特攻という”死”を覚悟した攻撃は、アメリカ兵を震え上がらせた、などと言う人がいる。だが、鈍足の練習機などで突っ込んでくる相手と、粘り強く戦術を練り、何度も攻撃をしかけてくる相手と、どちらが脅威であるか。答えは明らかではないだろうか。

 他の航空部隊が無力化され沈黙していく中、芙蓉部隊は最後まで組織的な攻撃を続けていた。当然のごとく、かれらもまた多くの犠牲者を出している。沖縄戦という特攻のイメージが強いのだが、このような戦い方をした人たちがいたことは、もっと良く知られているべきであろう。

 

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Comment

No title

お久しぶりです。
つい先日、私もこの本を読了したばかりです。
(新装版になる前に入手したものです。読んでいる最中に新装版が出たことに気付きました)

私が読んで思ったのは、芙蓉部隊の功績を宇垣長官も認めていながら、なぜそれを横展開できなかったのか、ということです。いろいろ事情はあるにせよ、制約がある中での創意工夫の努力の姿勢を、芙蓉部隊のみにとどめておくのは、組織の壁があったのか・・・。

>特攻という”死”を覚悟した攻撃は、アメリカ兵を震え上がらせた、などと言う人がいる。

これについては、特攻に直面した経験がある米兵の証言や、戦意喪失や、休養・メンタルケアが必要と判断された米兵が数多く出たこと、アメリカの中でも日本本土決戦見直し論が出てくるきっかけになったという話もあるので、「震え上がらせた」のはたしかではないかと考えています。

2008.03.09 (Sun) | j.seagull #CevbjWJc | URL | Edit

お久しぶりです

>芙蓉部隊の功績を宇垣長官も認めていながら、なぜそれを横展開できなかったのか

命令を下す側にとっては特攻作戦のほうが楽だった、というのはあるかもしれません。あの戦況で、生きて帰ってこさせる努力というのは並大抵のことではないでしょう。

>特攻に直面した経験がある米兵の証言や、戦意喪失や、休養・メンタルケアが必要と判断された米兵が数多く出たこと、アメリカの中でも日本本土決戦見直し論が出てくるきっかけになったという話もある

実はこのあたり、私は懐疑的なのですが。それとは別に、特攻の”成果”として取り上げられていることへの嫌悪感というのもあったりします。

2008.03.09 (Sun) | うちゃ #9fUrC8Yk | URL | Edit

どうなんでしょう?

 
 お初にお目にかかります。
 >特攻という”死”を覚悟した攻撃は、アメリカ兵を震え上がらせた、などと言う人がいる。
 ジョン・ダワーの「容赦なき戦争」や、昔読んだウォーゲーム雑誌のアメリカ人の書いた記事を見ると、「こいつら頭おかしい、交渉不能だから、とりあえず皆殺し」と、多くのアメリカ人・兵は、考えたみたいです。この辺の感覚が現れているのが、映画にもなったハインラインの「スターシップトルーパー 宇宙の戦士」に出てくるアレクニドの描写・設定で、この宇宙人は日本人・兵がモデルになっているそうです。で、パワードスーツを着たスターシップトルーパー は、交渉不能の相手として、死をも恐れぬアレクニドの群れを、核で焼き尽くすと。
 どうやら、”特攻”は、日本人に対する人種的偏見を煽っただけのようで。
 ”特攻”に対するイシハラ的、自慰的妄想は、現代人にとって有害なだけでしょう。

2008.03.11 (Tue) | L #- | URL | Edit

はじめまして

Lさん
 特攻が相手を脅えさせたとしても、それじゃ意味がありませんよね。本当に彼等が脅威を感じていたのかというのも実は疑問に思っていまして。島嶼戦になってからあちこちで玉砕が始まるわけですが、これを脅威と感じていた様子はほとんどなく。玉砕せずに戦った硫黄島の方が精神的にもずっとダメージを受けてるんですよね。
 無駄死にさせた側が、なんとか言い訳考えているような気がしてなりません。

2008.03.12 (Wed) | うちゃ #9fUrC8Yk | URL | Edit

芙蓉部隊について!

初めまして、ナオポレノフと申します。

私も、うちゃさまと同様、「彗星夜襲隊」を読みました!
それから、芙蓉部隊に興味を持ち、いろいろと調べているうちに、このサイトにたどり着きました。

その途中、いろんなサイトを見ているわけですが、きっと興味をもたれた方には耳寄りの話だと思うのですが、芙蓉部隊を一昨年から演劇という形で訴えている劇団があるのです。ごぞんじでらっしゃいましでしょうか?!

グーフィー&メリーゴーランドという劇団です。

しかも、この劇団、ただ公演として上演してるだけなく、まず、「彗星夜襲隊」の著者である渡辺洋二さんも関係してるらしく、そのほかでも先の本の中に出てくる元芙蓉部隊他員もチラシに名前が掲載されているのです。

私も、芙蓉部隊は今年になって知りましたが、それを著作者、現存者を前に(取材をされているのだとは思いますが、)チラシに名前を羅列して、堂々と公演を打っていることにより、芙蓉部隊について興味を掻きたたせられます。

きっと、お墨付きの公演なんでしょう。
私は、絶対に見に行くつもりです。

見てもいないので、推薦するつもりはないですが、情報としてご案内さしあげました。

美濃部さんって、きっと、すばらしい方だんたんでしょうね。

2008.06.23 (Mon) | Nopolenov #WSYI2dyY | URL | Edit

No title

ナオポレノフさま

初めまして、コメントと情報有難うございます。
検索して見つけてきました。
http://dx.sakura.ne.jp/~nnn/play/kb/kb.cgi?b=pr&c=q&id=365
ですね。
私はこういう話しこそ、もっといろんな人に知られるべきと思ってまして、映画になったらいいな、なんて考えてました。
私も都合付けて見に行こう。



2008.06.23 (Mon) | うちゃ #9fUrC8Yk | URL | Edit

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