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射雕英雄伝/洪七公

 あるときは食通の風来坊、またあるときは口達者な物乞い。しかしてその実態は、第十八代丐幇幇主、九指神丐こと洪七公。みんな大好き洪七公である。
 東邪・黄薬師同様、華山論剣で覇を競った五人の達人のうちの一人で、北丐の異名を持つ。武術の腕もさることながら、常に善人のためにその腕を振るう義侠心溢れるその姿は人々の尊敬を集めている。そんな七公にも欠点はある。とにかく美味いものには目が無いのだ。そのために指を一本失っていたりする。
 七公が郭靖と黄蓉の二人に出会ったのも二人が食べていた乞食鶏につられてのことだった。そして黄蓉の料理につられて郭靖に降龍十八掌を伝授することになる。弟子にする気は無いなんて言いながら結局十八手の内十五手まで教えてしまうことになってしまう。もっとも、食べ物につられたというのは半分本気で半分は言い訳のような気もする。

 根っからの自由人で、一人で気ままに放浪するのが性に合っているくせに、世話好きな性格で一旦かかわると面倒を見ずにはいられないんだろう。それゆえにあえて”弟子は取らない”なんて言って見せているのだと思う。結局は二人とも弟子にしてしまい、そのあとも何かと面倒を見てくれていた。三人でいると、仲の好いおじいちゃんと孫夫婦って感じなんだよな。

 みすぼらしい身なりと、とぼけた口調にだまされそうになるが、頭の回転の早さは黄蓉と渡り合えるほど。しかも全部承知しておいてわざと乗せられてみたりするとこがまた余裕である。見ているとこの二人、掛け合い自体を楽しんでるんだよね。お互い、そういう相手が居ることが嬉しいんじゃないかな。
 また、郭靖のまっすぐさは七公にとっても気持ちのいいものだったのだろう。最初は鈍い奴と見ていた彼のことも、単なる馬鹿じゃないと見直すことになる。

 そう考えると、それまで弟子を取らなかった七公が二人を同時に弟子にしたのも当然だったのかもしれない。黄蓉はその知略を、郭靖は純真なまっすぐさを買われたんだろうな。二人一組で自分の後を継いでくれる者と思っていたに違いない。

 強烈なキャラクターが多い射雕だけど、この人が出てくるとなんか安心できる。貴重な癒し系オヤジである。
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