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おじいさんは山に芝刈りに

 発売を楽しみにしていた「バックラッシュ!」、ようやく手に入れたのはいいのだが、結構なボリュームなのと、多数の著者によって書かれているためか、項ごとに文章のリズムが変わるので、通読するのはちょっときつい。そんなわけで、気になるところをつまみ食い的に読み進めている最中。

 中でも、発売前から楽しみにしてたのが瀬口典子氏の”「科学的」保守派言説を斬る!” この前書いたDNA萌えの人たちもそうなんだが、保守派の中に生物学を使って自説に権威付けを使用とする傾向が目立つように感じていた。それに対する批判として注目してみたい。
 話題に上っているのは、人類の進化史モデル、脳科学における脳の性差、そして”Y染色体継承”で有名になった性染色体の話。そのどれにも保守派が引用してくる説にはジェンダーバイアスがかかっているということだ。
 例えば、進化史モデルで言えば、良く引き合いに出されるものとして、男は狩猟のために巣の外に出て獲物を追い、女は子育てをしながらそれを待っているという「マン・ザ・ハンター」モデルというのがある。このモデルはそのまま、外で働く男と、家を守る女の図式になっており、人類はもともとそのように進化してきたというもの。ジェンダーフリーに反対する人たちも好んで使うモデルだ。
 しかし、著者によればこのモデルは既に過去のものであり、人類学者の間では主流の説ではないそうだ。変わって男女の性別には関係なく個人すべてが食料調達に関わっていた、女性の役割は子育てのみではなかった、という説が出てきている。これが単なる考察ではなく、様々なフィールドワークの結果から出てきているということが重要なのだろう。男性中心の進化史モデルに対する単なる異議申し立てではないのだ。

 例としてあがっているカラハリ砂漠の狩猟採集民族の女性の役割が面白い。彼女達は食料調達の担い手として、幼い子供を連れて食糧調達に出かけるそうだ。子供を守るためには、危険な動物にも注意を払うし、観察してきた情報はもどってから男たちの狩猟に役立てられるという。なんだか現在のワーキングウーマンというか”働くお母さん”みたいではないか。

 全体を通して言われているのは、科学者といえどもジェンダーバイアスからは逃れられておらず、仮説を立てる際に男性中心の先入観が入ってしまっていること、そして女性研究者が増えることで徐々にバイアスは修正されてきているにもかかわらず、未だにふるい仮説が好んで取り上げられているということだ。

 脳科学の話、性染色体の話も面白かったが(特に性染色体の話は”Y染色体継承”の主張の痛いところを突いている)、上記の進化史モデルの部分が一番意外性があったし、面白かった。この本、しばらく楽しめそうだ。
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