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ソラリスの陽のもとに/スタニスワフ・レム

 二度映画化されている古典SF。学生時代に一度読んだきりだったのだけど、ものすごく久しぶりに再読……というより、ほとんど忘れていたので初めて読んだようなもの(^^;

 二重恒星系の周りをあり得ない軌道で回る惑星ソラリス。その原因はこの星の表面の大部分を占める”海”にあった。この”海”はそれ自体が一つの巨大な生命で、惑星の動きをコントロールしていると思われていたのであった。人類は長年にわたってこの全く異質な生命とのコンタクトを試みるがことごとく失敗に終わる。そのソラリスの惑星ステーションにやってきた心理学者のケルビンは、この基地で異常な事態が発生していることを知る……。

 SFには多くの異星生物が登場するし、知性を持つものも少なくない。だが、ここまで圧倒的な”他者”として描かれた存在も珍しい。まず「生物である」というのも”海”の振る舞いを見た人間がたてた仮説に過ぎず、もしかしたらソラリスで起きていることは少し複雑な物理/化学現象でしかないのかもしれない(いや、それを言うなら、生命というのも「少し複雑な物理/化学現象」ってことになるのだが……)。
 それでも、異なる生命ということであれば、ずいぶん思索もされている、が知性となるとほとんどが人間のそれから大きく逸脱することはない。それは当然かもしれない、本書の中で、人が人以外の知性を求める動機について書かれている。少し長くなるけど引用してみよう。
われわれは人間以外の誰をも求めていない。われわれには地球以外の別の世界など必要ない。われわれに必要なのは自分をうつす鏡だけだ。(中略)そこでわれわれは自分自身の理想的な姿を見出したいと思う。

 結局の所、自分の姿を写す鏡として他者を求めているのに過ぎない人類に対して、ソラリスの”海”はあまりにも異質すぎた。だが、理解も共感も不可能でありながら、そこに確かに”知性”の存在を感じさせる相手がいれば、鏡として自らを映しださずにはいられないのか。もし、自分がその場に居合わせたら、やはりソラリスの”海”から、なんらかの悪意なり善意なりを受け取ってしまうだろうと思う。おそらくそこにはそんなものは存在していないだろうと知りながらも。
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Comment

鏡を持つ者

私も高校のとき読んだきりなのですっかり忘れているのですが……

引用部分をより突き放して、それゆえ分り易く表しているのはディックでしょう。
そしてレムにとってもディックにとっても、それは諦念に裏打ちされていると感じます。

>結局の所、自分の姿を写す鏡として他者を求めているのに過ぎない人類に対して、
その通りで、鏡を必要としているのは人類一般なんですよね。一方、人類の中で分類した場合、レムやディックは他人や社会に対して、鏡を持ってますから。みんな持てばいいのにね。鏡。

2008.09.24 (Wed) | 千年虫 #7tx8cIQU | URL | Edit

ディックは

実は”電気羊”しか読んだことがないんですが、言われていることは分かる気がします。SFには”人類を映す鏡”としての役割が確かにあるのですが、自覚して使っている人もいれば、無頓着な人もいますね.

2008.09.24 (Wed) | うちゃ #9fUrC8Yk | URL | Edit

No title

 あーそのディックとレムですが、どうもこの二人は当初(さもあるべきことですが)互いの作品を相当高く買っていたらしく、ディックはアメリカSF作家協会にはたらきかけてアメリカSF大会に特にレムを呼んで講演してもらったてんですね。
 するとレムがアメリカSFについてすごい毒舌を。まったく毒舌の自覚なく。
 ボロカスに言われた人々は「あっはっは、そういうみかたもあるねー」くらいに言って笑ってたらしいんですがディックはいたく恥じ入って責任を感じ、レムをコミュニストのスパイとして当局に通報。帰国したレムは「あのころディックは幻覚剤をのんでいたので幻覚が見えたのはしかたない」と言ったそうですが私は言いたいそれ幻覚剤のせい違うと。
 人間がわかりあうというのはほんとうにむつかしいものです。

2008.09.25 (Thu) | くま(仮) #- | URL | Edit

No title

 そんなエピソードがあるとは知りませんでした、しかし、帰国してからのレムの発言、フォローのつもりだったのかもしれないけれど、やっぱり毒舌になっちゃってるような(^^;

2008.09.26 (Fri) | うちゃ #9fUrC8Yk | URL | Edit

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2008.09.22 (Mon) | かめ?

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